空調服が発売されたのは、ちょうど19年前の2004年。当時、日刊工業新聞の小さなベタ記事で存在を知った筆者は、その新規性に引かれ、開発元に取材に赴いた(04年の記事:真夏に長袖!なのに裸より涼しい「空調服」)。

待ち合わせたのは気温34度の真夏日。カンカン照りの空の下に、グレーの長袖作業着をふくらませた涼しい顔の男性が現れて度肝を抜かれた。空調服を開発した市ヶ谷弘司氏が、自ら身にまとって現れたのだ。

どうみても暑そうなのに、汗一つかかず涼しい顔をしていた彼。「真夏に長袖!?」と筆者の脳が大混乱した。

だが、借りて着てみると確かに涼しい。汗ばんだ体にファンの風が当たると、気化熱で寒いぐらいだ。なんだこの服は! とますます困惑した。

当時、市ヶ谷氏は「10年後の夏には、空調服が当たり前になっていて、『夏にTシャツを着るのっておかしいよね』なんて会話がされるようになれば」と話していた。だが筆者は、この変わった服が一般に普及するとは想像していなかった。

「夏なのに長袖」という違和感、ドラえもんのように体が膨らんで見えること、背面のファンが目立つこと……などから、業務用にはアリだろうが、一般の人が外出時に着ることはないのでは……と考えていた。

そして19年後の今。

空調服は、一般向けに多種多様なデザインが発売され、キャンプやコミケなどのイベントで、暑さを和らげる服として普及した。オシャレな空調服も続々と登場。先日、元SMAPの香取慎吾さんが描いたデザインをあしらったモデルも発売された。

19年前、グレーの作業着をふくらませて筆者を迎えてくれた市ヶ谷氏と会った時、こんな未来が来るなんて予想しなかった。市ヶ谷氏と、彼が創業した空調服社のスタッフがその可能性を信じ、開発と改良、拡販を続けたことが、今に続いているのだろう。

空調服は「“涼しい服”を開発することで、エアコンの使用量を抑え、地球温暖化問題解決に貢献したい」と開発された。その信念は19年の時を経ても色あせず、より暑くなった日本の夏を、過ごしやすくしてくれている。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2307/03/news087.html